父親と婿

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頭を下げ合う二人の男の間には、それ以上の言葉もなくギクシャクとした空気が漂った。 「和彦さん、ちょっと手伝ってください。これ、ジャガイモ重くって…」 真琴の声に、古庄が頭を上げる。同時に父親も声のした方に、振り返った。 「ちょっと、欲張りすぎよー。そんなに食べられるの?」 「食べられるわよ。週末は、和彦さんも一緒なんだから」 母親とそんな会話をしている真琴の側に、古庄は駆け寄り、その手にある重そうなレジ袋を軽々と持ち上げる。 そして、ジャガイモをトランクに積み込むと、二人は車に乗り込んだ。 「それじゃ、ね」 真琴が車の窓を開けて短く別れを告げると、古庄も一礼して車を走らせ始める。 しかし、数十メートルほど走ったところで、突然古庄は車を止めた。 「…忘れ物ですか?」 そう問いかける真琴には応えず、ギアを切り替えサイドブレーキを引くと、ドアを開けて走り出る。 急いで賀川家の門まで戻ると、真琴の父親と母親は玄関を入るところだった。 「お義父さん!!」 古庄はその背中に声をかけた。 驚いて振り返った父親は、無言で目を丸くしている。 「…僕は、お義父さんを見習って、真琴を育ててくれたこの家のような家庭を築いていきたいと思っています。どうかこれからも、見守っていてください」
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