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息を荒げながらの古庄の言葉に、父親の驚いていた顔が変化する。仏頂面の口角が上がり、ニッコリと優しく笑いかけてくれた。
その顔を確認すると、古庄も安心して、嬉しそうに笑顔になった。
その澄み切った極上の笑顔に、側で成り行きを見ていた母親のみならず、父親までも、魅了されて見惚れてしまう。
言葉をなくしている二人に、古庄は改まって一礼すると、踵(きびす)を返して車へと戻った。
「どうかしたんですか?」
車から降りて側に立っていた真琴は、訳が解らず心配して尋ねる。
「うん、挨拶してきた」
と、運転席のドアを開けながら、古庄は答えた。
何の挨拶だろう…?と、真琴は疑問を顔に書いたが、ハンドルを握っている古庄の晴れ晴れとした表情を見て、疑問や心配は解けてなくなった。
しばらくすると、古庄は運転をしながら、いつものように助手席に座る真琴の手を取った。
それに呼応するように、真琴が新たな話題を持ち出す。
「今日の夕御飯、ジャガイモをたくさんもらったから、シチューでいいですか?」
「…うん」
古庄は生返事をしながら、幸せそうに微笑んでいる。
「まだ、シチューを食べたい季節じゃないですか?メインは他にして、ポテトサラダでも作りましょうか?」
「…うん」
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