10:白い朝

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「ん……おお、おはよ……」  海が顔を上げ、半分開いてない目で俺を見上げる。 「お、おはようじゃないよ。痛くて動けないんだから」 「ん? んー。……そっか。ちょっと待ってろよ」  海はクマのようにムクッと身体を起こし、大股でベッドから降りた。マットが波打ちまた激痛が走る。 「はぐ!」 「ほら、風呂か? トイレ? 連れてってやるよ」  ベッドに埋めていた顔を横に向けると、ベッドの前に屈む海。 「うう……トイレ」  みじめだと思いつつ、腕をのばしゆっくり海の背中に移動した。 「そっとお願い」 「りょ~かい」  お尻に手をそえ、ゆっくりと立ち上がる海。振り向いて笑顔を見せる。 「痛かったか?」  落ちないように首にしがみつき俺は「ウンウン」と頷いた。 「なんでこんな痛いの? こんなのなったことないよ。どうなってんの?」 「あ~……まぁ、最初はそうなのかもしれないなぁ。ごめんな?」 「最初? なんで海が謝るんだよ」  ちんぷんかんぷんで質問する俺に海が微妙な笑顔を作った。 「とりあえずトイレ済ませてこいよ。便座に座らせた方がいいか?」 「前で下ろしてくれたらいいよ。自分で座るから」 「そっか。そっか」  トイレのドアを開け向きを変えて、ズルズルと静かに下ろされる。 「トイレから出られないようなら呼べよ」 「うん、ありがと」  トイレの扉が閉まる。俺は壁を支えに痛みを耐えながら、おじいちゃんみたいにゆっくり便座へ腰を下ろした。  ほんと、なんなんだろ。寝違えなんかでもなさそうだし。しかも、もよおしてるような気もしなくもないのに……。 「でない」  そこまで考え、ハッ! と気が付く。まさかそんな、あり得ないよ……。だって全然なんも覚えてないっ!  サーッと血が降りていくのを感じながら、だから二人して裸だったのかと妙な確信を得る。  出てないけど取り敢えずジャーッと水を流し、また壁に手を突き、よたよた立ち上がり大声を張り上げた。 「海っ!」
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