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直ぐにドタドタと走ってくる音。ドアがバッ! と開いた。
「終わった?」
俺は海をグッと睨んだ。
「お前、昨日やった?」
海が「へ?」って顔をする。
「やった……って、やったけど……え? なにが?」
「なにが? じゃないよ! スッゲー痛いよ! なんてことしてくれんだよ!」
「……まぁ、最初は……そういうもんだろ?」
「知らない知らない! そんなの知らな……うぅっ」
ブンブン首を振ったことで、自ら身体の中心に振動を与えてしまい痛みに身が縮む。海が「ちょっと待ってろよ?」と扉を閉めた。その途端、なぜかとてつもない心細さに襲われた。
「……かい~、待ってよ」
ちょっと待ってみたけど、なにも待つ必要なんてない。動くと痛いだけ。トイレから出ようとすると、海が戻ってきた。「開けてー」の声に扉を開く。海の手には白い錠剤二つと水の入ったコップ。
「ほら、鎮痛剤。とりあえず飲んどこ? 筋肉痛にも効くから」
「……うん。ありがと」
壁に手を突いたまま、パカッと口を開けた。海が手のひらを傾けて錠剤を口へ入れてくれる。
「ほれ」
次に口元へ運んでくれたコップに口をつけ、傾けてくれる水で錠剤を飲み込んだ。
「飲んだ。お風呂連れてってよ」
「はいはい」
俺に背を向け屈む海。自分で連れて行けと命令したくせに、ちょっと偉そうだったかなっと気が引けた。そんなこと気にもしてないと言う顔で海がおいでと振り返る。そろそろと手を伸ばし、またおんぶしてもらう。海の肩越しに、聞いてみた。
「これすぐ治ると思う?」
「うん。この薬よく効くぞ。即効性だから」
「……うん」
風呂場に着くと、海が振動を与えないようそっと俺を下ろす。ヨロヨロと向きを変え、いつもの習慣で洗面台の鏡を見て唖然とした。
「なんだこれ!」
体中に赤い小さな痕がいっぱいついている。
ビビってるのにカーッと顔が熱くなった。言葉も無くただ口をパカパカして海に訴えると、海が頭をガシガシ掻いて照れくさそうに笑った。
「えへ。あ、そうだ。俺一緒に入ってやるよ? 自分で洗うのキツイだろ?」
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