10:白い朝

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 直ぐにドタドタと走ってくる音。ドアがバッ! と開いた。 「終わった?」  俺は海をグッと睨んだ。 「お前、昨日やった?」  海が「へ?」って顔をする。 「やった……って、やったけど……え? なにが?」 「なにが? じゃないよ! スッゲー痛いよ! なんてことしてくれんだよ!」 「……まぁ、最初は……そういうもんだろ?」 「知らない知らない! そんなの知らな……うぅっ」  ブンブン首を振ったことで、自ら身体の中心に振動を与えてしまい痛みに身が縮む。海が「ちょっと待ってろよ?」と扉を閉めた。その途端、なぜかとてつもない心細さに襲われた。 「……かい~、待ってよ」  ちょっと待ってみたけど、なにも待つ必要なんてない。動くと痛いだけ。トイレから出ようとすると、海が戻ってきた。「開けてー」の声に扉を開く。海の手には白い錠剤二つと水の入ったコップ。 「ほら、鎮痛剤。とりあえず飲んどこ? 筋肉痛にも効くから」 「……うん。ありがと」  壁に手を突いたまま、パカッと口を開けた。海が手のひらを傾けて錠剤を口へ入れてくれる。 「ほれ」  次に口元へ運んでくれたコップに口をつけ、傾けてくれる水で錠剤を飲み込んだ。 「飲んだ。お風呂連れてってよ」 「はいはい」  俺に背を向け屈む海。自分で連れて行けと命令したくせに、ちょっと偉そうだったかなっと気が引けた。そんなこと気にもしてないと言う顔で海がおいでと振り返る。そろそろと手を伸ばし、またおんぶしてもらう。海の肩越しに、聞いてみた。 「これすぐ治ると思う?」 「うん。この薬よく効くぞ。即効性だから」 「……うん」  風呂場に着くと、海が振動を与えないようそっと俺を下ろす。ヨロヨロと向きを変え、いつもの習慣で洗面台の鏡を見て唖然とした。 「なんだこれ!」  体中に赤い小さな痕がいっぱいついている。  ビビってるのにカーッと顔が熱くなった。言葉も無くただ口をパカパカして海に訴えると、海が頭をガシガシ掻いて照れくさそうに笑った。 「えへ。あ、そうだ。俺一緒に入ってやるよ? 自分で洗うのキツイだろ?」
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