2:基本的にされるがまま

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 一個、三百八十円もするプリンだ。そりゃ美味しいだろう。 「だろ? ケーキ屋のだから。その代わり賞味期限は明日までだから、忘れんなよ?」 「海は? 食わないの?」 「俺はビールでいい」 「なら朝食にさせてもらうよ」  そう言って孝宏は嬉しそうにニンマリと笑う。  朝からプリンて。絶対甘党じゃん。なんで冷蔵庫にビール入ってんだよ。と、素朴な疑問が湧く。 「孝宏、このビールちょっと飲んで?」  俺は飲みかけのビールを孝宏の口へ押し付けた。 「プリン食ってんのに、なんだよ。賞味期限とか切れてねーよ?」 「いーから、一口」  うなじを押さえたまま、軽く缶を傾け、半分無理やりに孝宏の口へ流し込む。「むー」と唸りながら、ビールを飲む孝宏。基本的にされるがまま。こういうところも昔から変わっていない。  苦味に顔をしかめた孝宏へ問うた。 「どう? ビール美味い?」 「今はプリンがいい」  そう言って、ゆっくり味わうようにプリンを口へ運ぶ。    おかしな話だ。どうして何もない素振りをするんだろう。普通なら開口一番に言うことがあるだろ? 俺に対して。  もしかして、認めたくないから黙ってる? そう考えるのは、俺の都合のいい解釈なんだろうか。ここへ来るまでの間、どう言おうかと何回も頭の中でシュミレーションしてきた。想定できる会話も。なのにこいつは、ひとつとして想定通りに動かない。  結局しびれを切らし、俺は口火を切った。   「……なんも聞かないの? 紗奈とのこと」
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