序章―時を失った魔法使い―

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序章―時を失った魔法使い―

ダステア歴809年。 この世界の陸地の4割を占める広大なカライラ大陸全土を巻き込んだ戦争が勃発した。 勢力は3つ。 カライラの最西端の王国ローゼルディースを中心とした西から南にまたがる西部連合。 東部の帝国キッドニアを中心とした東から南にまたがる東部連合。 そして最北端の王国ヨタを中心とした、大陸北部に広がる北部同盟。 唯一中立の立場で戦争絶対不介入を貫いたのは、大陸のほぼ中心に位置する神公国ダステアであった。 それぞれの地域は採れる資源も発達した技術も異なり、互いがそれをすべて我が物にしようと戦争が起こった。 魔法も、剣も、科学も。すべてが殺戮と破壊のために使われた。 血で血を洗う戦いとはまさに・・・と言うべき凄惨な戦いであった。 その最中、ローゼルディースの若き魔術師リンツィア・トルネールは残酷な運命に巻き込まれていた。 彼は王国軍の魔法兵として戦争に加わっていた。当時10あった魔導隊のうち一つの隊長をわずか25歳という若さで任され、稀代の天才魔術師とまで言われていた。黒髪に紅い目ですらりと細長い体の彼は、味方からも敵からも「紅蓮の悪魔」と呼ばれ、恐れられていた。 彼の率いる魔導隊は常勝無敗。自軍には一人の犠牲者も出さず、敵軍を殲滅して回った。 しかし。
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