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彼はさらに深い絶望を背負った。禁忌を犯したのに結局愛する人たちを救うことも護ることもできなかったのだ。
・・・いや、もう一度戻ればあるいは・・・。と考えた時に気付いた。最初に禁忌を犯して時間を巻き戻すことを思いついたのもこのタイミングであった。王宮にある執務室兼研究室のこの部屋で椅子に座っているときだ。「定め」とでもいうのだろうか、大きな流れは変えられないのか?
そしてもう一つ彼は気づいた。『時間を支配しようとする者は、神の罰を受け、人ならざるモノとなり果てて、永遠の時を彷徨う。』という禁忌にまつわる伝承のこと。神の罰など無いではないか!
「もうとっくにその体は罰を受けているよ。」
リンツィアは突然背後から声がしたので驚いた。するとそこには一人の少年が立っていた。しかしその体は青白く発光しており、半透明で向こう側の景色を透過している。
「誰だお前は。」
「僕かい?僕はね・・・神とでも名乗っておこうか。」
「神・・・。」
「禁忌を犯したものに罰を与える者、と言った方が分かりやすいかなあ?」
「ふざけるな、いったい何なんだお前は!」
「神だと言っているだろう!」
少年は怒鳴るように返した。その迫力にリンツィアでさえも黙ってしまった。
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