ずっと…

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その日、私は普段着ないスーツを身に纏い、慌ただしく道を駆け回っていた。 「やっば!会場どこ?この道で合ってる?」 「たぶん合ってる。ったく、みかんが寝坊するから…」 「ゆずが起こしてくれないからじゃん!」 駅から携帯を片手に彷徨う私とゆず。今日は東京で開かれる国際学会当日。季節は変わり、もうすぐ桜が咲き誇る頃。 この学会のために久しぶりに帰って来た日本。まだ一年も経っていないのにすごく懐かしく感じる。 今日は朝から講演をしなくてはならない。私なんかが…と信じられなかったけど、あの堀田から取り返したデータを解析した論文が評価され、賞を受賞することになったのだ。 私なんかがおこがましい…と思ったけど、必死で頑張った論文。素直に嬉しいと思った。 受賞を記念して、講演をすることになっているのだ。 ところがすっかり朝寝坊して、気付けばギリギリの時間。スライドは出来ているので良いのだけど、受賞式に間に合わないのはさすがにやばい。 慣れないヒールで足元がおぼつかないけど、必死の形相で会場に向かって走っている最中なのです。 「調子に乗ってあんなに飲むから…」 さっきからチクチクゆずが攻撃をして来る。確かに飲みすぎだったけど、久しぶりに会った仲間と交わしたお酒は本当に美味しかった。
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