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扉にもたれかかり、テイラー先生とは違った大人な色気をまとったキャシーさんが手を振る。
私を育ててくれた尊敬してやまない人物の一人。
『キャシー。久しぶりだな』
『ほんと、久しぶりね』
昔から知っているような口ぶりの二人。どこか私が入り込めない雰囲気をまとっている。
「また後でな」
頭をくしゃりと撫でると中川さんは部屋を後にした。
『変わらないわね。彼は』
ふぅっと一息つくとカツカツとヒールを鳴らして歩み寄るキャシーさん。私の前まで来ると穏やかな表情で私をギュッと抱きしめた。
『本当によく頑張ったわね。私の大切な弟子』
『…キャシーさんが応援してくれたから頑張れたんです。キャシーさんがいなかったら私はこの論文を書き上げることは出来ませんでした』
アメリカに来て書き上げた論文。いつも厳しいけど、気にかけてくれたのは彼女だった。
『でも、賞を取ったから終わりではないのよ。これからが大切。今度はあなたが後輩を育てる番』
『私が…?』
『充分その素質はあるわ。私と中川が認めた人物よ?もっと偉くなってくれないと困るわ』
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