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キャシーさんの屈託のない笑顔に、なんて私は幸せ者なんだろうと思った。
中川さん、キャシーさんという偉大な指導者に恵まれて、自分のやりたいことを全力でできる環境にいるなんて…これほど幸せなことはない。
頑張って来たからゆずという大切な人にも出会えた。
『さっ、もうそろそろ時間ね。ちゃんとスピーチの練習はして来た?』
『…あまり自信はないですけど』
『これからたくさん講演の依頼が舞い込むわよ。慣れておかないとね』
人前で喋るのは得意ではない。むしろ苦手な方なのに…
講演の時間が近づいて来たと思った瞬間、心臓がトクトクと鼓動を早める。
『本当にみかんは可愛いわね』
キャシーさんが私の頬を撫でた。
『大丈夫。ゆっくり深呼吸して、緊張感も楽しむ。それくらいの気持ちでいなきゃだめよ』
妖艶なその表情に緊張とは別の意味で心臓がドクンと跳ねた。同じ女性とは思えない色気に頭がクラクラする。
『それじゃあ行きましょうか?』
エスコートされて、会場へ向かう。すごく長い道のりだった。堀田にデータを盗まれて、中川さんを恨んだあの日々。とっても苦しい日々だったけど、今はあの毎日があったからこそ今の自分がいるんだと前向きにとらえれるようになった。
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