ずっと…

9/29

4308人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
アメリカに行くと決めてがむしゃらに頑張ったとこ。うまくいかなくて悩んだこと。キャシーさんや他のメンバーにいっぱい助けてもらったこと。 アメリカで怖い思いもしたけれど、それも含めて今の私がいると思えば悪くない。 『それでは本日の受賞記念講演はメーヤーホスピタル、エコーセンター所属、春川みかんさんです。みなさん、盛大な拍手を』 会場が割れんばかりの大きな拍手。壇上に上がると今まで見たことのない景色が広がっていた。 大勢の重鎮達の視線が私を捉える。こんなたくさんの人たちの前で話したことなんてない。 小鳥みたいにトクトクと急ピッチで走り出した私の心臓。落ち着かなきゃ、落ち着けみかん。 そう思った時だった。 何故だろう。何百人という大勢の人がいるのに。彼だけが際立って見えてしまうのは。 視線の先にいたのはゆず。 彼は自分の首元をポンポンと叩くと、大丈夫とゆっくり口を動かした。 大丈夫… それを見た途端、鼓動がだんだんゆっくりになっていくのが感じ取れた。 目を閉じ、もう一度深く深呼吸をして、ゆっくりと周りを見渡す。 すっかり落ち着きを取り戻した私はマイクを取り、スピーチを始めた。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4308人が本棚に入れています
本棚に追加