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『だんだん柚希のことが好きとかそういう純粋な気持ちだけではなく、彼を振り向かせようと意地になっていたんだと思う。その結果、春川さんに酷く怖いことをしてしまって…本当にごめんなさい』
深々と頭を下げたテイラー先生。許した訳ではないけれど、彼女を責める気持ちにもなれなかった。
ゆずを振り向かせたいその一心で周りが何も見えなくなってしまったのだろう。こんな時、彼女にちゃんとしたアドバイスができる人がいれば違ったのかもしれない。以前他のスタッフが話していた。男ばかりの世界の中で生きていくためにテイラー先生は色々なものを犠牲にしてきたんだと。家族も友達もいない孤高の女医だと。
『本当にもういいですよ。終わったことですから』
『…ありがとう』
深く頭を下げるテイラー先生の表情はわからない。
『あの、先生。私と友達になりたいと言ったのも嘘ですか?』
頭を勢いよく上げたテイラー先生は目を丸くしたまま固まっている。
『嘘だったらいいです。もし、嘘じゃなかったら…』
『嘘じゃないわ』
私の言葉を遮るように発せられた言葉。彼女の目は真剣そのものだった。
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