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「……ぁ」
目を開けたら、世界一可愛い黒猫が隣で丸まって寝てて、つい声が零れた。
しまった。
寝てた。実は、あんまりちゃんと寝れなかったんだ。寝たけど、夢見が悪いっていうか寝心地が悪いっていうか。なんか、今、ようやくちゃんと眠れた気がする。そして、ふと感じたぬくもりに目を覚ますと、横には黒猫。
スースーって穏かな寝息を立てて、手をぎゅっと握って、口元をその手で隠して、本物の猫、もしくは猫が擬人化したようにも思えてくる。
耳、つけたまんま寝ちゃってるけど、これ、寝癖とかすごくならないかな。でも、明日は大学ないし、親もいないから、ふたりでゆっくりしてればいいか。
「……」
何、この寝姿。可愛いすぎ。
黒い猫耳に、赤い首輪に鈴つけて、その肌には点々と俺が一週間ぶりにつけた痕がある。
見てたら、思わず微笑んでた。クスッと小さく笑って、柔らかい髪の間に指を差し込んで、そっと撫でる。
「……ん」
気持ちイイ?
頭を撫でられた貴方は小さく肩を竦めて、小さく、鈴を鳴らして、もっと小さく丸まった。
「……」
本当に猫だったら――なんて。
「にゃあ……」
「何? 起きてたの?」
猫の鳴き真似をした歩がクスクス笑って、ちらっとこっちを上目遣いで見上げて。その感じも本物の猫みたいでさ。
「起きた。大和の手で撫でられて起きた」
「それ、耳、取らないとかもよ」
「んー」
「それに、ごめん、俺も爆睡してた。中、掻き出さないと」
一週間ぶりでたがが外れたんだ。俺も貴方も、貪り合って、何度も中で果てて、何度も貴方は俺でイって、背中には無数の引っ掻き傷がきっとある。それの痛みと貴方の体温に包まれて熟睡してた。おかしいよね。痛いのに熟睡するなんて。
「大和、俺……」
でも、もう貴方なしじゃ生きてけない。俺らは兄弟で恋をする運命だったなんて、そう思うんだ。兄弟なら、血が繋がってる。半分でも、これが異端でも血は必ず俺らを繋げてくれる。
「猫になりたいって思った」
また笑って、そしてそんなことを口走る。
「思ってた。大和がお母さんに何か欲しいって頼むのはすごく珍しいだろ? そうまでして猫が欲しいんだって。いいなぁ、そんなに欲しがられる猫はって」
「ぇ、だって」
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