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「大和は部活とかしてないの?」
「……なんで?」
「いっつも俺が家に帰るといるから」
貴方が早く帰る日だけだよ。それ以外はそれなりに遊んで帰って来るさ。
「今日はいなかっただろ」
「でも俺が帰って来てすぐに大和も帰って来た。もしかして暇人?」
少しからかうような口調の歩の手元、何を読んでいたのか覗いて見ると、お堅い経済雑誌だ。
これが彼女がどうのこうの書かれたお気楽な雑誌だったら、冗談に見せかけてその場で取り上げて捨ててやろうかと思った。
彼女なんて作らせないよ。
そう思いながら胸を撫で下ろす自分に笑える。
「暇人は歩もだろ」
「俺は暇なんじゃない、勉強してるんだ」
母親を病気で亡くし、うちに引き取られてた歩は、親父の望む将来を選ぶことばかり考えている。
母さんも親父との結婚自体をビジネスのように捉えている部分があって、将来有望な歩に辛くあたるようなことはなかった。
愛人の子という扱いはしない。
でも自分の子というわけでもない。
ようは嫁いだ霧島家を支えるひとりとしてのみ認識している。
そして霧島家にとってメリットがあるのであれば自分の実家にもメリットがある。
そういう合理的な考え方をする人だ。
俺もそんなふうに考えられればよかったのにね。
そしたらこんな不毛な相手を好きにならずに済んだのに。
「大和、モテそうなのに」
「俺?」
「カッコいいじゃん」
屈託なくそんなことを言い放つ歩を少し苛めてやりたくなる。
並ぶように座り、雑誌を読みながら食べていた歩の菓子を奪い取って、次から次に口に放り込んでいく。
慌てて奪い返そうとする歩の手の届かないところに袋を掲げると、尚も手がそれを追いかけた。
どうして半分でも血が繋がっているくせに、こうも違うんだろう。
菓子の袋を奪い返そうと伸ばされた手はうっとりするような象牙色をしている。
不健康な白さとは全然違う。
着ている服を全部剥ぎ取ったら、どんな色をしてるんだろう。
そんなことを考えていたら、無意識に歩の腕を掴んでいた。
「返せよ。全部食べるな! デブになるぞ」
「歩だって全部食べたら太るよ。俺が半分食べてあげてるんだって」
「か・え・せっ!」
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