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彼女との時間の後は、何故だか心が満たされていて、世界が美しく見えさえする。
夜の渋谷の雑踏に身をはじかれそうになりながら歩いていると、スペイン坂の当りで、見覚えのある後姿が目の前を横切った。
あれは。
すぐに記憶が蘇る。
あれは、マリエ様の前に付き合いのあった女性だ。
割と長く続いたような気がするが、彼女の失態により関係を解消することになった女性だ。
その女性は、ぼくに気づくこともなくスペイン坂を昇り始める。
なんとなく、好奇心が湧いて、ぼくは彼女の後をつけてみることにした。
女性は、改装中のパルコの前を足早に通り過ぎると、左へ曲がる。
どこに向かっているのだろう。
見失わないよう、ぼくも歩くスピードをあげた。
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