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――続く内に段々払い落すぐらいじゃ取れなくなってきた。 申し訳ないが仕方がないからちょっと力を強くして叩き落す。幸いにも彼は気にしていないようで助かっている。 さらには引っ付く場所も変わった。 腰の辺りに腕だけが巻き付き、腹を撫でまわしていたり。 床から生えたかのように表れて脚に巻き付き、そしてやっぱり腹を撫でまわす。 何だ、内臓目当てなのか? 目の無い顔から出てきた舌と半透明の指先が待鳥の腹部に埋まっているのを見て悪寒を覚える。 引きはがすのも段々と手間取るようになってきて、待鳥と腕の間に手を差し込んで剥ぎ取るようになった。 中々入っていかなくて、じわじわ食い込ますように指を進ませている時にふと思った。 いや、ようやく気が付いたと言うべきか。 ……これ、傍から見たらセクハラじゃないか? 普通の人間にはこの幽霊だかなんだかは見えないはずだ。 そして俺の手は明らかに待鳥の尻を揉んでいた。 ……あ、セクハラだこれ。 それでも何も言ってこない待鳥は、もしかしたら俺と同じように見えているのかもしれない。 自分ではどうにもできないから、解った上で何も問わずに受け入れている。そうだったらいい。 何のリアクションも起こされないから俺からも今更何も言い出せない。 さらに他の誰も何もツッコんできてくれない。カミングアウトする絶好の機会なのに。実は見えますって。 そんな事を考えながらも脚に巻き付いた奇妙に歪んだ腕を見つけてしまい、今日も俺は部下にセクハラする事を強いられる。 …………1回ぐらいお祓い、頼んだ方がいいかもしれないな。 近くに神社とかあったかな。 記憶を辿りながら待鳥の言葉を聞いた。 「あの、ちょっと勉強したい事あるんで今日残りたいんですけどいいですか?」 「あー、いいよ。鍵預けるわ」 大丈夫かな、と一瞬思ったが、まあ大丈夫だろと俺と先輩以外の社員に預ける用の鍵を手に取る。 念のため、晩飯食ったら様子見にきてやろう。 それで何かあったら真剣に祓って貰える所を探そう。 何も無いといい。 そう願いながら待鳥に鍵を渡した。 END
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