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別に帰りに怪しい場所に誘われたりだとかも無いし、なんかよく解らないけどただのスキンシップだ、挨拶だ。そう、そうに決まってる。 もうそう思い込むことに決めたのは、自主的な残業というか勉強をするために1人事務所に残っていた時だった。 アドバイスを求めれば若干辛口だけれども懇切丁寧に指導してくれるし、飲み会の時も変に絡んだりもしてこない。いい先輩だ。 本当、あれさえなければなぁ。とデスクに突っ伏しため息を吐くと、ふっと意識が途切れた。 ……あ、ヤベ、寝てた。 眠るのと同様に、覚醒するのも突然の事だった。 どうして急に、と理由を探そうとすると誰かの気配がある事に気が付いた。 小さな足音が響いて段々と近づいてくる。 誰だろう。 多分この人がドアを開ける音とかで目が覚めたんだろう。 ちょっと5分ほど目を休めていただけです、と言い訳のため顔を上げようとした。 ギシッと椅子が鳴ったのは、俺が体制を変えようとしたからじゃない。 ……近づいてきていた誰かが突然背後に居て、俺の背中を押さえつけるように伸し掛かってきたからだ。 誰だ。 この時間に突然戻ってくるなんて誰かが忘れ物をしたんじゃなければ伏野さんか社長かだ。 俺は居残る為に鍵を預かっていて、他に所持しているのはその2人だから。 念のためにと入口は施錠済みだし、忘れ物を取りに来たのならどっちかに鍵を借りに行くよりは電話を入れた方が早いだろう。でも恐らく誰からの連絡もなかった。
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