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足首にかかる圧が強くなって、ギシギシと聞こえない音を立てる。
そのまま前へと引っ張られ、デスクが腹に食い込む。
痛みへの反射か体が少し動いた。が、そんな事は気にも留めずに何者かは容赦なく足を引き続け、後ろからは押し続ける。
もう無理だろうと思っているのに止められる事は無い。
内臓が圧迫され、喉の奥から何かがこみ上げてくる。
何で、俺こんな目に合ってんだ。
つーか何、何なんだよこれ。
痛いし気持ち悪いし息も吸えなくなってくるし気持ち悪いし痛いし痛いし。
あ、これ死ぬ。死ぬわ。普通に死ぬ。無理。
そう思った瞬間、フッとすべてが楽になった。
なるほど、死ぬな。
わかった、逆に楽になるんだ。なるほど、死ぬのも悪くないんじゃないか。いややっぱ嫌だ。死にたくない。
でももっかい痛いのもヤダ。どうするの、どうなるんだ俺は。
今どうなってるんだ。
何か今なら開きそうな気がする、と瞼に力を入れようとした途端に背中に痛みが走った。
「いっ……っ!」
「おい、大丈夫か?」
スパーンという聞きなれてしまった音と、行為とは反対に暴力的ではない声。あ、伏野さんだ。
「あ?え?何、何なんですかね、夢?」
抜けた声で問いかけながら起き上がると、腹部に鈍い痛みが走った。あと足も何か痛いぞ。夢じゃないのか。
「あー、お前やっぱ1人残業禁止な」
俺の問いへの答えではなくそんな事を言われ、何でですか、と尋ねると伏野さんは、ばつの悪そうな顔で告げた。
「ここ、事故物件だったんだよ」
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