ワインと肴

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その奇妙な店は、店と呼べるのかもわからなかった。 見た目はトタン屋根の物置小屋。下を向いて歩いていなかったら、擦り切れた扉の地面に近いところに、「ワインと肴(さかな)」という看板があることに気づかなかっただろう。 それは確かに看板だ。 その下に、 「open 18:00~ close 2:00」 と書かれていたから。 そんな店を、どうして見つけたか。 単純に、ぼくが下を見過ぎていたからだ。 * ぼくは全身の細胞が死んだような気持ちだった。 身体中の細胞に排泄物が溜まり、ミトコンドリアも機能していないのか力が湧かない。胃も働かないから食べなくてもお腹が鳴らない。 このときのぼくは、寝ても寝なくても同じだった。
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