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「シロちゃん、本当にごめん。この埋め合わせは絶対するから」
「いいって。それより早く部活に行って?」
両手を合わせて拝んでくるその肩を笑って押し返すと、何度も『ごめんね』を繰り返しながらミコちゃんが走り去っていった。
「さて」と、ひとりになって向かう先は、中庭の礼拝堂。
チューダー様式の赤レンガの外壁を覆い尽くしている蔦が色鮮やかに紅葉していて、白薔薇模様のステンドグラスをくっきりと浮かび上がらせているさまが美しい。
重い木製のドアを開けて中に入り、慣れた足取りで奥の部屋まで進む。目的は、掃除。
本来なら3人の作業だけど、すずちゃんは風邪で欠席。ミコちゃんは文化祭を目前にして、所属してる演劇部の稽古が大詰めだから、そっちを優先してと私から頼んだ。
普段から綺麗にしてるし、ひとりでも全然大丈夫。事実、サクサクと掃除は進んでる。あとは祭壇の――
「……っ、きゃあ! なっ、何でこんなとこに居るのっ!?」
「えー、酷いなぁ。俺のが先客だしー。それに、いつ気づいてくれるか、ワクワク待ってたのに」
会衆席の最前列。そこで仰向けに寝転んでる赤司さんを発見。
「でも床掃除でバッチリ見えた太ももは、ご馳走様!」と、眼鏡を外してウインクしてきた顔に、手に持ったモップを投げつけそうになった。
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