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「名前で呼ぶ理由はねぇ、俺の名前とお揃いだから。ほら、赤と白で」
私の質問に、ふにゃっと笑いながら適当な回答。
「適当なこと言わないで。赤と白でどこがお揃いなんですか」
「本当なのに。どっちも『明るく、はっきり』って意味の言葉が語源なんだ。ね、お揃いでしょ?」
「どうでもいい」
「うわ、ひどっ」
嘘。本当はちょっと嬉しいかも。
それに、このフワッとした笑顔を見るのも好き……かも。
「まぁ、いいや。そんな素っ気ない真白ちゃんに、俺から提案でーす。
クリスマスさ、俺とデートしよう。だから予定空けといてね?」
「は? そんなの、する訳ないでしょ? てか、クリスマスまであと何日あると思って……っ」
拒絶の言葉は、最後まで言えなかった。
トンと肩を押されて壁に押しつけられて、そのまま腕で囲われたから。
「ちょっ……」
「君に教えてあげる」
柔らかな声が、甘い囁きに変わる。
「赤と白の世界を。そこが君の居場所だってこともね」
赤と白? 居場所? この人、何言ってるの?
「何、言って……」
言われてる内容が全く理解出来ない。喘ぐように言葉を紡げば、するりと頬を撫でられた。なだめるように。
「もう黙って? ねぇ、その時にあのイヤリングつけてきてね?」
更に距離が縮まる。互いの足が触れ合うほどに。
「クリスマスは、“俺にとって特別”なんだ。
だから、きっと真白ちゃんも……」
「あーかしーっ! 居るのー!?」
密やかな刻が、ぷつりと途切れた。
勢いよく開いたドアから放たれた大声で。
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