こじあけられた心

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こじあけられた心

ここ数日、私の頭上にある空は、真っ青で高くて、清々しいほどの快晴だった。その空の青さが、今の私には少し憂鬱だったりする。 それもこれも全部――。 「どうしよー! 本番まであと少しなのに、練習すればするどほ上手くできなくなってる気がする!」 お昼休みにミコちゃんとすずちゃん、私の三人で中庭でお弁当を広げていると、突然ミコちゃんが叫び出した。 「文化祭の演劇部の出し物?」 「そう。本番が近付くにつれて不安ばっかり大きくなる」 頭を抱えるミコちゃんにすずちゃんが笑う。 「大丈夫。ミコちゃんは本番に強いから」 「また、そんな適当なこと言ってー」 二人の会話をどこか遠くで聞いているような気分でいる私に、すずちゃんがにっこりと顔を覗き込んで来た。 「ね? シロちゃんもそう思うよね?」 「え? あ、う、うんっ! ミコちゃんなら、大丈夫」 どこかに行ってしまっていた意識を取り戻し、慌てて笑顔を作った。あの、礼拝堂で一人取り残された日から、こうして気付くといつも上の空で。 そんな自分が嫌で、授業中でも廊下でも、赤司さんに会っても絶対に顔を見たりしないようにしていたのに。 もう、あの人のことで心がかき乱されるのは御免だ。とにかく、関わり合いたくない。 あの人と関わると、必ず心が苦しくなるから。相も変わらず、晴天にめぐまれた祝日。 早良野学園の文化祭の日がやって来た。 私たちのクラスは、バザーをすることになっている。 割り当てられた時間に教室でお客さんの対応をすればいいだけだから、文化祭と言っても特に何か出番があるわけじゃない。 だから、ミコちゃんの舞台を観に行くのが一番の楽しみだった。 講堂で行われる演劇部の舞台。 演目は『ロミオとジュリエット』だ。 私はすずちゃんと連れ立って、講堂の中央、前よりの席を陣取った。 「楽しみだね。ミコちゃん、今頃すっごい緊張してそう」 隣に座るすずちゃんは少し興奮気味だ。 「そうだね。1年生の時は裏方で、舞台に立つのは今年が初めてだもんね。それもロミオの役だし」 長身のミコちゃんにはぴったりの役だと思う。
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