こじあけられた心

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「あ、私、そろそろ楽屋に戻らなきゃ」 「そう言えば、私もクラスの当番の時間だった。シロちゃんはこの後どうする?」 いつもの三人の間に流れる雰囲気に戻ったことに、どこかホッとする。 「そうだな、私は少しそのへん見て回ってから教室に戻るよ」 「分かった。じゃあ、後でね」 二人が手を振って私に背を向ける。 それを見て、無意識のうちに溜息をついている自分がいた。 少し、一人になりたい。そう思った時だった。 「また、そんな顔して」 え? 誰――? 声だけが耳に届く。声の先を探して視線を彷徨わせた。 「こーこ。上だよ」 思わず見上げてしまってすぐに後悔した。 中庭を囲む校舎の二階の窓から顔を出す、赤司さんの顔がしまりなく緩んでいる。 「上から見る真白ちゃん、いい眺め。この前の礼拝堂では下からだったけど、上からもいいね。セーラー服ってそそるな。なんか見えちゃいそうで」 「――っ!」 咄嗟にセーラー服の胸当てをぎゅっと握り締める。 もう、本当に最低!! 赤司さんとはもう関わらないことに決めていた。キッと睨みつけた視線を前に戻し、無視して赤司さんに背を向ける。 「真白ちゃんさ、あの二人と仲がいいんじゃないの?」 既に歩き出しているというのに、そんなのお構いなしに声を掛けて来る。 でも、その声がさっきと違う声音で、私は思わず振り返ってしまった。 「……え?」 「宮林さんと長谷川さん」 「それが、何か?」 突然何の話なのか。本当に訳が分からない。 「一番近くにいる友人にまで、そんな風に距離を置くような表情しちゃダメでしょ」 「何、言って――」 緩んでいたはずの表情はどこかに消え去って、珍しく真剣な眼差しだった。 「近くにいるのに何も言ってもらえない。それが、どれだけ傷付くことか分かる?」 さっきの私たちの会話、ずっと上から見てたの――? 「『私はみんなとは違う』って顔。どこか諦めたような顔。君が考えている以上に気付くものなんだよ。距離が近ければ尚更ね」 私が心の中で何を考えているのか、どんな感情が渦巻いているのか、この人には見透かされていた――?
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