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――――夢を見た。
重いまぶたをこじ開けて薄く目を開いてみれば。カーテンの隙間から、まだ明けきらない空の藍色だけが見える。
俺を呼ぶ、優しい呼びかけが耳に残っていた。
『――冬哉くん』
軽やかな響きの、懐かしい声だ。
「声、覚えてたのか……てか、頭いてぇ」
昨夜はなかなか寝つけずに、珍しく酒の力を借りて寝た。
あの子の顔が。別れ際のあの表情が、ずっと頭にちらついて離れなかったから。
気丈に振る舞っているけれど、どこか寂しげな、何かを諦めてるようなあの子の瞳が、どうしても――
『赤司さんの色だ』
頭痛に耐えきれず、もう一度眠ろうと目を閉じた時。夢で聞いた声と、俺に笑いかけたあの子の声が、重なった。
何故そう思ったのか、よく分からない。
ただ、同じ響きを宿していた。
そんな気がしたんだ。
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