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「見つけた」
画面の中に映し出された『色』に、思わず声が漏れていた。
紅緋色(べにひいろ)。
色づいたポプラ。そして、赤司さんのブリムハットの色だ。
あの色をずっと言葉で表現したくて探してたけど、ようやくしっくりくるものを見つけられた。
「シロちゃん、何見てるの? すごく嬉しそう」
――ドキッ
「あ、美術の課題のネタ探し」
慌ててスマホを下に向けて、横から覗き込んできた相手を見上げれば。
「ふぅん、いいの見つかった?
ところで、さっき出された化学の課題でね?」
何も気づいてない様子のすずちゃんが、前の席に座って化学の問題集を開く。
良かった。見られてなかったみたい。
すずちゃんはあの帽子をかぶった赤司さんを見てるから、同じ色を検索してたってバレたら……あれ? 別に困らない?
だって私たちは、ただの教師と生徒。それに、あの人は高校時代に好きだった人の面影を私に重ねるような――
「――ね、一緒に赤司先生のとこ行こうね?」
「え、何で?」
「聞いてなかったの? 分からないとこ、質問しに行くんでしょ?
先生、月曜のお昼は暇だって言ってたし」
はい、聞いてませんでした。
てか私は行きたくないって言いたいけど、にこにこ笑ってるすずちゃんには言えない雰囲気。
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