さやめく心

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どうしよう! そう思いつつも、手が伸びていくのはスカートのポケット。その中にあるモノの輪郭を、布地の上から指でなぞってしまう。 コレも返さなきゃ、だよね。 シルバーの縁がついた紺色の万年筆。 土曜日に返せなかった、赤司さんの忘れ物。 化学の授業の後、もしかしたらコレについて何か言われるかと思っていたけれど、終業のチャイムが鳴るなり、赤司さんはさっさと教室を出ていってしまった。 声をかけられるかと身構えていた自分の自惚れが、恥ずかしい。 でも、いい機会かもしれない。 すずちゃんが質問してる間に、こっそり机に置いて返せばいいんだ。 そうしたら、あの臨時教師との接点なんて何もなくなってスッキリするじゃない。うん、そうしよう。 万年筆を返す方法を決めたことでスッキリした気分になっていた私は、気づいていなかった。 自分の指がポケットの上を常になぞっていて、そこに感じる固さを何度も確認していたことに。
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