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(俺との約束があるのに、なんで断ってくれなかったんだ……。せめて日にちをずらすとか。そもそも、今日は両親が留守なんだぞ……!?)
ぐるぐると言葉が頭の中を回るが、それ以上を口に出すことはできなかった。
「あの……ごめんね、たかくん。……また明日ね」
気まずそうにしながらも、遥奈はいそいそと家の中に入ってしまった。それはまるで、立花が来るのが待ちきれないとでもいうかのように。
(……だ、大丈夫だよな? ……ちょっと浮ついてるだけだよな)
イケメン大学生に褒められ、おだてられて、舞い上がってるだけだと信じたいが、不安は募るばかりだ。
心臓が嫌な音を立てる。嫌な想像が、現実味を持ち始める。口の中が乾き、喉が渇いてくる。
──遥奈と立花裕也がどんな仲なのかを、自分のこの目で確認したい。
一度芽生えた疑心は、容易に消えてくれない。事実を確認する以外にない。幸が不幸か、遥奈が家に入ったときに、施錠の音はしなかった。忍び込もうと思えば、今なら簡単にできる。仲の良い幼馴染みなのだから、言い訳はいくらでもできる。
「……ッ」
嫌に粘ついた唾を呑み込み、ドアノブに手をかけた。
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