先生

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そんな貴之に気づくはずはなく、ふたりは楽しく談笑し、いい雰囲気になっている。 「こんなにいい点数がとれたの初めてです。先生のおかげですっ、ありがとうございます!」 そこには、貴之の知らない幼馴染みの顔があった。こんな弾けるような明るい声は、今まで聞いたことがない。 「はは、俺のおかげなんかじゃないよ。遥奈が頑張ったからさ」 家族以外で遥奈のことを呼び捨てに出来るのは、幼馴染みの貴之だけだ。それなのに、立花は馴れ馴れしく遥奈の名を呼び捨てにした。だが、呼ばれた遥奈は少しも気にする様子もなく、それどころか嬉しそうに、 「……ありがとうございます」 頬を赤らめ、もじもじと恥ずかしそうにするのだ。 貴之は、たまらない気分だった。ずっと特別な存在だと思っていた幼馴染みが、会って二ヶ月にも満たない家庭教師にここまで心を許していることがショックだった。 「遥奈はもともと、頭のいい子なんだよ。普段の授業は、一人ひとり丁寧に教えてくれるわけじゃないからね。だから結果に結びつかなかったんだ。こうやって、マンツーマンで教わったから、いい結果が出たんだよ。この結果は当然のことさ」
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