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「はい……でも、一番は先生のおかげです……先生が……沢山、教えてくれたから……」
そう言って遥奈は、わずかに立花に身体を寄せた。
「……っ!」
その様子を見て、貴之は胸が苦しくなってきた。
(あんな……あんな遥奈は、見たことがない……)
自分に向けられている信頼なんて、ちっぽけなものだったのだろうか。それを勘違いして、自分が特別な存在なんだと思って──。
胸が締め付けられて、全身がバラバラになりそうだった。
「先生……」
そんな貴之の前で、遥奈はじりじりと立花に身を寄せる。
(……お、おいっ、どこまで近寄るんだよ、遥奈!?)
絶望的な気分で見守る貴之の前で、遥奈はまるで立花に抱きつこうとでもするかのように身体を寄せた。
(……っ、やめろ……やめてくれ、遥奈!)
貴之は、耐え切れずに飛び出そうとした。が──、
「……たかくん、だっけ? 幼馴染みの……彼に勉強を教えてもらったこともあったんだっけ?」
不意に立花から自分の名前が出て、固まった。遥奈はというと、びくんと身体をこわばらせて、それから気まずそうに立花から視線を逸らした。
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