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しかし、そこで貴之の頭にあるアイディアが浮かんだ。
(……こんな不意打ち、遥奈の性格からして、戸惑うに決まってるよな。部屋に誘って、もっと思い出話とかして、いい雰囲気になってからのほうがいいかな)
「その……悩み事といえば、悩み事……かな。だから、その……これから俺の部屋に来てくれないかな?」
家が隣でよく知った仲なので、お互いの家に行くことは珍しくない。そこで告白して、晴れてふたりは恋人関係になる──はずだった。
「今日これから? うん、何も用事ないし……あ!」
小さく叫んで、遥奈は申し訳なさそうな顔をした。
「……用事、あった?」
「あ、うん……そのね、実は……今日から家庭教師の先生が来るの」
「家庭教師?」
貴之にとっては完全に初耳で、予想もしていない展開だった。
「私、成績があんまり良くないからって、お父さんとお母さんが勝手に申し込んじゃって……ごめんね?」
確かに遥奈の成績は良いとはいえなかった。タイミングが悪いが、これでは仕方ない。
「別に謝るほどのことじゃないよ。そういうことなら仕方ないよね。……こっちはいつでも出来る話だし……うん」
「本当にごめんね?」
「いいっていいって」
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