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「ふふっ、冗談だよ」
「……そ、そうだよな。ははっ」
そう言って笑う遥奈だったが、貴之は愛想笑いしかできなかった。
「でも……」
だが、続く遥奈の台詞は予想だにしないものだった。
「……たかくんになら……いいよ?」
「え……?」
またも言葉を失う。遥奈は頬を染め、挑発的な、試すような目で見つめてくる。
遥奈のこんな表情を、貴之は初めて見た。
一度も会えなかった夏休みの間に、幼い頃から親しい仲である遥奈が、別人になってしまったかの恐怖を覚える。
「早く行こっ、たかくん♪」
軽い感じに笑う遥奈。
校舎に向かう背中を、貴之は少し遅れて追いかけた。
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