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新学期初日ということで、午前中の内に終了。
各々部活動や委員会に励む中、帰宅部の貴之と遥奈は早々に家路についていた。
「その……遥奈は今日暇?」
そんな言葉を発して、自分で驚いた。
あんな光景を見ても尚、遥奈への想いは変わっていなかったことに。
「今日は大丈夫だよ。……今日だけじゃなくて」
「え?どういうこと?」
遥奈はなんてことのないように、笑って言う。
「うん。もう家庭教師がいなくなったから、暇が増えちゃったの」
平然とした口調の言葉の意味を、一瞬理解できなかった。
理解し貴之に湧き上がったのは疑問。
遥奈は家庭教師、立花裕也に好意を持っていたはず。
「え……遥奈は、その……いいの?」
「いいって……何が?」
遥奈は不思議そうに聞き返す。貴之は慎重に口を開く。
「遥奈は家庭教師のこと……好きだったように見えたから……」
流石に不法侵入や覗きの件は聞けない。
しかし帰宅時の会話だけでも、この疑問は不自然ではない。
「たかくんってば……そんなわけないでしょ」
不機嫌そうに頬を膨らます遥奈。
貴之は尚更、意味が分からなくなった。
「……たかくんにそんな勘違いされるの、やだなぁ……」
「え?」
「何でもないよ!それで、今日どこか行く?」
楽しそうな遥奈を見て、ひとまず疑問は後回しに。
2人はそのままの足で街へと向かった。
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