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「たかくん、おかえりー」
部屋の扉を開くと、遥奈は枕を抱きしめベッドに座っていた。
「何してるの?」
「んー?こうしてると落ち着くなって」
「そっか……」
枕に顔を埋める遥奈を見て、否応にも意識してしまう。数十分前まで普通の幼馴染みだったとはいえ、今は恋人同士。
恋人が自分のベッドに座り、愛おしそうに枕を抱きしめる様は貴之を昂らせた。
「これお菓子とジュースね」
「あっ、オレンジジュース!ありがとっ♪」
取り繕うように、台所から持ってきたお茶菓子を丸テーブルに乗せる。嬉しそうに笑う遥奈を横目に、座布団を敷き座る。
遥奈もベッドから立ち上がり座布団の上、貴之の真正面に座った。
「いただきまーす」
遥奈がジュースを飲むのを見つつ、貴之も一口。
乾いた喉に、甘酸っぱい冷えたオレンジジュースが沁み渡る。
もう一口飲み、ひと息ついたところで遥奈がクッキーを摘みながら口を開いた。
「たかくんは夏休み何してたの?」
一瞬固まる。動揺を隠し努めて冷静に答える。
「今年は家族旅行は無かったし、友達と遊びに行ったくらいだよ。花火大会とか、夏祭りとか」
「そうなんだぁ。プールは行かなかったの?」
「プールも行ったな。海は行かなかったけど」
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