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内心を見抜かれないように、たわいの無い話を続ける。
遥奈が誰とどんな夏休みを過ごしていたのか。
何も疚しいことはないと知り安心したい。だがそれと同じくらいの、不安と恐怖が貴之にはあった。
「私も友達と旅行に行ったんだよ」
貴之の内心を知ってか知らずか、楽しそうに喋り出す。
一瞬呆気に取られた。
「と、友達って……誰と?」
声が震える。口の中が渇いているのが、自分で分かった。
「たかくんの知らない人だよ?違う高校の女の子とかもいたし」
他校の女子。部活動をやっていない遥奈が他校の生徒と知り合うには、何らかの共通点が必要。
まさか、と思い当たり顔を青ざめる。
否定して欲しい。安心させて欲しい。そんな願いを込めて震える唇を開く。
「それって、家庭教師繋がり……とか?」
「そうだよ。よく分かったね?」
貴之の願いは容易く打ち破られた。
「海の見える別荘でね、みんなでバーベキューとか海水浴とかしたの。初対面の人もいて最初は不安だったんだけど、みんな凄くいい人達で……。すぐに仲良くなっちゃった♪」
楽しそうに思い出話を語る遥奈。
旅行に行ったメンバーの内、遥奈を含めた3人は立花裕也の教え子だったそうだ。
メンバーに男はいたのか、立花裕也本人がいたのか聞くのは止めておいた。
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