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「もぉーっ!たかくん聞いてる?」
嫌な考えばかりが過ぎる中、遥奈の呼び声でいつの間にか俯いていた顔を上げる。
「……!う、うん。もちろん聞いてるよ」
「ならよかった♪」
遥奈は嬉しそうに微笑み、四つん這いでテーブルを迂回しながら近付く。
女の子座りで左隣に並んだ。
「ふふっ、たかくんなんで正座なの?」
「あ……あぁ、なんでだろ。変だよな」
完全に無意識だった。気恥ずかしさを隠すように、胡座を組み直す。
「ねぇ、たかくん?」
「どうしたの?」
遥奈の声に振り向く。上目遣いに視線が釘付けになる。
「……今年の夏休みは一緒にいられなかったけど……」
胡座を組んだ膝の上に、温かな感触。遥奈の手のひらが乗せられたのが分かった。
貴之の身体に緊張が走る。
「来年の夏は、一緒にいてくれる?」
甘えるような、ねだるような声に、貴之は頷く。
「もちろん。来年も再来年も、ずっと一緒にいよう。2人の思い出を作っていこう」
膝に乗せられた、彼女の手を両手で優しく握りしめる。
遥奈は安心したのか嬉しそうに微笑んだ。
「よかった……」
暫し見つめ合い、遥奈がゆっくりと目を閉じた。
導かれるように、貴之から顔を寄せ、キスをした。
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