不安

2/5

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
期末テストが終わって、学校は既に夏休み気分。授業は半日で終わり、今は下校時間。 貴之と遥奈は、いつもの家路を歩いていた。 (遥奈……なんだか最近、ますます綺麗になったような……) あれからも進展はないまま、一ヶ月半が過ぎていた。貴之は、ついため息をついてしまいそうになり、慌てて堪えた。そんな貴之とは対照的に遥奈は御機嫌だった。 「まさか、こんなに点数取れちゃうなんてびっくり♪」 いつも平均点かそれ以下だった成績が、貴之と同じくらいになっていたのだ。 「その……良かったな」 「うん♪」 満面の笑みを浮かべる遥奈。しかし、貴之はそれを素直に喜べなかった。なぜなら── 「これも裕也先生のおかげだよ。ふふっ」 そう。遥奈の成績が上がったのは、家庭教師である立花裕也のお陰なのだ。有名私立大学のイケメンで、スタイルもファッションセンスも良い。 貴之も家の前で何度か見かけたことがあるが、男の自分から見ても格好良いと言わざるを得なかった。しかし、どこか軽そうな雰囲気で、貴之は良い印象を感じなかった。 「先生ってね、教え方が凄く上手なの。学校の授業だと解りにくくて眠くなったりするんだけど、先生の授業ではそんなこと全然ないの。すごいよね?」
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加