不安

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最近の遥奈の話題は「裕也先生」のことばかりだった。 「それでねそれでね、話がもう、すっごく面白いの! あちこち旅行してて、海外にも何度も行ってて、聞いたことないような話、たくさんしてくれてね、気がついたらもう勉強時間が終わってて……!」 「……それで勉強になってるの?」 「それがね、そういう楽しいおしゃべりの中に、授業に関係があること、上手に入れてくれるの。それが自然に頭に入っちゃうから、後で教科書を見返したら『 あっ、これ先生が話してくれたことだ』って、すらすら頭に入っちゃうの」 「へ、へぇ……」 「もちろん、普通の勉強もするよ? 数学の時なんか、先生は結構厳しいけど、私が解るようになるまで何度も教えてくれるの」 「そ、そうなんだ……」 こんなに楽しそうに話す遥奈は見たことがなかった。嫌でも不安は募る。 「それでね、先生が言うには、私は勉強の仕方を知らないだけで、まだまだ伸びしろがあるんだって」 立花のことを、それはもう嬉しそうに話し続ける。貴之が若干、引き気味になっていても、それに気がつかずに遥奈は一方的に話し続けてくるのだ。
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