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(……でも、俺と遥奈の間には、何年も積み重ねた思い出がある。子供の頃から、喜びも悲しみも一緒に体験してきたんだ。遥奈なら、最後には俺を選んでくれるはずだ)
そう自分に言い聞かせるも、心は不安で揺らいでいた。このままだと、本当に家庭教師に遥奈を奪われてしまうかもしれない。
「そ、そういえばさ!」
「うん?」
「ほら、今日はテストの結果を見ながら復習する約束だったよな? 何時からにする?」
この話は、一週間以上前から約束していた。今日は家庭教師が来る日程ではなく、遥奈の両親も留守なのだ。そこで、貴之が遥奈の家にお邪魔して、一緒に復習することになっていたのだ。が──、
「あ、あのね……たかくん」
遥奈は気まずそうに、口を開いた。
「実はね、今日は裕也先生が特別に来てくれることになってて……答案を見直しながら、間違ったところを見てくれるって……だから、ごめんね?」
「お、俺との約束は……」
「その……テストで良い結果だったのも先生のお陰だし……。それにね、忙しい中、私のために来てくれるのを断れないよ」
貴之との約束は、呆気なく破られていた。
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