国立超心理学研究所

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☆★☆ 「これが検査結果書です。江利香ちゃんには、超能力者としての素養はありませんでした。たぶん、察しが良いだけなんじゃないでしょうか」 「そう、ですか」  鴫原さんは、少し安心した様な顔をした。無言で江利香ちゃんを抱きしめる。きっと心の中で何度も何度も謝っているのだろう。江利香ちゃんには、人の心はなるべく読まない方が良いと諭してある。そんな能力を使わなくても、今のお母さんの気持ちは、きっと伝わっているだろう。 「私の思い違いで、お騒がせしてすいません」 「いえ、僕も最初は超能力だと思いましたし。では、これで失礼します。じゃあね、江利香ちゃん」  深々とお辞儀をする鴫原さん。僕の隣でボサッとつっ立ってる課長。それをじっと見つめる江利香ちゃん。と、江利香ちゃんがべぇっ、と舌を出し、お母さんの腕を引っ張って家に入って行った。 「なんです、あれ?」 「いや、あのカーチャン見てて、エリカもあと20年したらイイ女になるな、と思ってたのがバレたな」 「最低ですね」 「へへ。さて、帰るか」  僕達は近くの駅に向けて歩き出した。  ふと、疑問に思う。東京から神戸に向かう新幹線の中で、江利香ちゃんが教えてくれたことは本当だろうか? 課長がぐうすか寝ていたので、そっと聞かせてくれたのだ。 「普通の人は、他の人のこと全然わかんないんだよね? お兄ちゃんもカチョーの考えてること、わかんないんでしょ? カチョーはずっと私のこと心配しててくれたよ。夜の街で、色んな人に合わせて、色んな人の事教えてくれた。大人には色々あるんだって。そんな心をうっかり読んじゃったら、きっと私には耐えられないって。それに、人には知られたくない事がたくさんあるから、覗いちゃダメだって。でも、カチョーには隠す事ないから、いくら覗いてもいいって言ってくれた。最初から私の味方だったんだよ。だからね、お兄ちゃん、カチョーのことあんまり怒らないであげて」
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