国立超心理学研究所

12/12
前へ
/12ページ
次へ
 江利香ちゃんの言う事だから信じるしかないんだけど、なんだか無性に悔しい。少しウサ晴らしをしたって許されるだろう。 「あの親子、うまくやっていけますかね?」 「さあねぇ」  課長はデキる上司顔で、遠くを眺めている。その横顔を、じっと見つめてやる。 「なんだよ、気持ちわりぃな」 「『さて、一件落着したし、新幹線で祝杯だな。こんな暑い日はビールに限るぜ』って、考えてますよね」  課長は驚いて足を止めた。 「おまっ、なんでそれがわかる?! エリカに何か習ったのか?」  僕はたっぷりと間を取ってから、答えた。 「まさか。課長の考えてることなんて、誰にでも見抜けますよ」  ぶふっ、と課長が吹き出した。 「ククッ。そうか。ちげえねぇ」 「ふふふ」 「ハハハハハ」  実際にはこの人が何を考えているかなんて、わかりゃしない。でも、このトンデモ上司とは、それくらいの距離感でちょうど良いのだ。この人とは、いや、人と人は、分かり合えないから面白い。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加