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江利香ちゃんの言う事だから信じるしかないんだけど、なんだか無性に悔しい。少しウサ晴らしをしたって許されるだろう。
「あの親子、うまくやっていけますかね?」
「さあねぇ」
課長はデキる上司顔で、遠くを眺めている。その横顔を、じっと見つめてやる。
「なんだよ、気持ちわりぃな」
「『さて、一件落着したし、新幹線で祝杯だな。こんな暑い日はビールに限るぜ』って、考えてますよね」
課長は驚いて足を止めた。
「おまっ、なんでそれがわかる?! エリカに何か習ったのか?」
僕はたっぷりと間を取ってから、答えた。
「まさか。課長の考えてることなんて、誰にでも見抜けますよ」
ぶふっ、と課長が吹き出した。
「ククッ。そうか。ちげえねぇ」
「ふふふ」
「ハハハハハ」
実際にはこの人が何を考えているかなんて、わかりゃしない。でも、このトンデモ上司とは、それくらいの距離感でちょうど良いのだ。この人とは、いや、人と人は、分かり合えないから面白い。
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