国立超心理学研究所

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 電話からは、疲れた様子を滲ませる女性の声が聞こえてきた。 「あの……娘が超能力を持っているんじゃないかと思うのですが、そういった相談はそちらで受けていただけるのでしょうか……?」  子供が超能力者だという申し出は、大抵の場合、親の思い込みだった、ということでケリが付く。とは言え、話も聞かず電話を切るわけにもいかない。 「はい、こちらでお伺いします。どういった現象が見られますか?」 「市谷君、対象か!?」  電話のやり取りを耳聡く聞きつけた阿久津課長が、割り込んで来る。僕は受話器を耳に当て、女性の話を聞きながら、うなずいた。 「よし! 詳しい話は現地で聞く。住所を聞いて、直ぐに行くと伝えてくれ! 大塚室長、そういうことですので、続きはいずれ」  そう言い放つと、有無を言わさぬ態度で出かける準備を始めた。 「そんな不正確な情報にいちいち付き合うから成果が上がらんのじゃないか?」 「いやいや、千里の道も一歩から。砂漠の中から一粒の砂金を探すような作業が我々の本分と心得とります。さぁ、市谷君、いくぞ!」  阿久津課長に急き立てられて、研究所から連れ出された。結局、詳しい話は聞けないまま、連絡をしてきた女性、鴫原啓子さんの元へ向かう事になった。 「まったく大塚め、年がら年中わめきやがって。超能力者なんているわけねぇっての」 「課長、その発言は立場上どうかと……」 「フン。で、電話をかけてきた勘違い野郎はどこにいるって?」 「神戸です」 「遠いな。ま、クソメガネと顔を突き合わせなくて済むなら、出張も好都合だ」  僕は課長と1日顔を突き合わせる事になるのか。げんなりしつつ、東京駅から神戸に向かった。
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