国立超心理学研究所

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 まいった! 僕には本物としか思えない。だけど、それを判定するのは研究部の仕事だ。 「ごめん、疑って悪かった。テレパスとしか思えない! お母さんと話をしてくるから、ちょっと待ってて」  僕は客間にとって返し、ぜひ研究所で詳しい検査をしたい旨を鴫原さんに伝えた。幸いにも学校は夏休み中なので、長期間家を離れても問題はない。 「それは構いませんが……。親も、一緒に行く必要があるでしょうか?」 「あ、宿泊費等の事でしたらこちらで手配いたしますのでご心配なく」 「いえ、あの、江利香をお預けできませんか?」 「江利香さんお一人をですか? できなくもないですが」  鴫原さんは苦悩の表情を浮かべていた。 「親子だからといって、何もかも見られてしまうというのは、落ち着かないものです。もし、検査で対処法がわかるのなら教えていただきたくて……。私、このままではあの子のこと……」  喋りながら感情が昂ぶってきたらしい。女性の涙に慣れていない僕は、どうしていいものやら分からず固まってしまった。この親子は少しの間離れて、冷却期間をおいた方が良いのかもしれない。  鴫原さんが落ち着くのを待って、検査承諾書や未成年の扱いに関する同意書その他書類一式を記入してもらう。    江利香ちゃん自身は「ママがそう言うなら」と、1人で遠出するのも、検査を受けるのも何とも思ってないようだった。  別れ際、鴫原さんは「気をつけてね」と声を掛けてはいたが、目を合わせていなかった。気持ちを知られたくないための、無意識な行動だろう。親子で見つめ合う事もできないなんて、切なすぎる。 「お母さんは少し疲れてるんだ。だから、休ませてあげるために僕たちだけで出かけよう。遠足だと思えば良いよ」  これは僕の本心。目を見て言える。あ、しまった、あと1人、変なおじさんも一緒だった。大丈夫かな。 「別にいいよ」  うーん、考えただけで通じるのは話が早い。
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