国立超心理学研究所

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☆★☆  阿久津課長とは新幹線のホームで落ち合った。数時間前までは、超能力者なんているわけない、と断言していた課長だったが、江利香ちゃんの力を目の当たりにすると「いるもんだな」と、あっさり宗旨替えをした。  考えている事の当てっこ遊びをして、なぜか2人はウマが合ったようだ。今では、新幹線の座席でババ抜きをしている。8歳の女の子とどう接して良いかわからない僕に比べ、遠慮がない課長の方が江利香ちゃんも気が楽そうだ。 「2人でババ抜きして楽しいですか? というか、江利香ちゃんが絶対に勝つでしょう?」 「ところがそうでもない。ずっとウ◯コを思い浮かべてたら、こっちの考えを読んでこなくなった」 「最低ですね」 「さてエリカ。残り2枚だな。ババじゃない方を引いたら俺の勝ちだ」  江利香ちゃんは、手に持った2枚のカードを真剣な目で見ている。 「ババはこっちかな? それともこっちかな?? へへ、こっちだ。はい、俺の勝ち! 顔に出すぎだよ。けけけ。お前、超能力に頼り過ぎてるから嘘を付くのも見破るのも下手だな」 「もう一回!」  悔しいのか楽しいのか、子ども特有のしつこさで、何度も勝負を挑んでくる。それに応える課長は、精神年齢が近いのだろう。 ☆★☆  東京駅に着くと、夕方になっていた。研究部には、明日検査をするよう依頼してある。今日は研究所近くのホテルに3人で泊まる予定だ。 「お前、エリカの荷物持って先にチェックインしててくれ。あと、俺の替えのパンツとシャツ、適当に頼むわ」 「課長はどうするんですか?」 「エリカにちょっとした東京見物と、美味いもんでも食わしてやろうかと思ってな」  2人は気が合うようだし、まぁ、任せてもいいか。急な出張に泊まりだから、何かと準備も必要だし。僕は先にホテルに行って、今日の報告書をまとめておくとしよう。 「わかりました。連絡したら、すぐ出てくださいよ」
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