国立超心理学研究所

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☆★☆  翌日、江利香ちゃんの支度で一悶着ありながらも(女の子の朝の準備なんて、オジサン2人じゃ手に負えない!)、どうにか予定時間に研究所へついた。  検査担当者は、ESP研究室の大塚室長だった。「部下に任せときゃいいのに、よっぽどヒマなんだな」とは課長の弁。 「大塚室長、我々も検査に立ち会わせてもらえませんかね?」  課長が尋ねると、大塚室長は眼鏡の奥からジロリ、と睨んできた。 「対象とグルになって、私をペテンにかけるつもりか?」 「滅相もない。一流の研究者であられる大塚先生を騙せる訳がないでしょう。ただ、あれですよ、あれ。なぁ?」  なんで僕に振ってくるんですか! 「えーと、その、検査の仕方を少しでも覚えれば、研究部の手を煩わせずに、こちらの方でノイズを弾けるかな、と思いまして」 「ほう。上司と違って、部下は真面目に仕事をする気があるようじゃないか。良いだろう。そういう事なら簡易検査から始めようじゃないか。本検査に進んだら厳密にやるがな」  なんとか言い訳が通じたようだ。江利香ちゃんを含めた僕たち4人は、検査室に入った。一面グレーの壁に、机と椅子だけがあるという、殺風景な部屋だ。モニタリング機能もあるが、作動していないようだ。まだその段階ではないのだろう。  江利香ちゃんと大塚室長は向かい合って机についた。2人のあいだには間仕切りがあり、手元が見えないようになっている。僕と課長は大塚室長の後ろで立ちんぼだ。 「本来ならデータ処理し易いようにパソコンかタブレットを使うんだが、君たちの為に古典的な方法でやろう」  室長は机の引き出しから、ESPカードを取り出した。5枚のカードにそれぞれ星型や波線、丸などの記号が書いてある。 「鴫原さん、と言ったかね。私がこの5枚のカードのうちどれかを見て、その形を頭に思い浮かべる。君は僕の頭を読み取って、どの形かを答える。いいかな?」 「はい」 「では、始めるよ」  大塚室長は、江利香ちゃんに見えない様に間仕切りの手前でカードをシャッフルし、1枚めくった。ちらと覗くと、四角のマークだった。そのカードを手元に伏せると、ゆったりと座り直した。
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