最後のメール

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見るように目を細めた。 すっかりその気になっているが、 雰囲気は出ている。 そこから雪が降ってくるイメージで左手をひらひらと降ろすしぐさは、 石川さゆりにそっくりだ。 自分もその場のノリで思わず、 「さゆりー」と合いの手を入れた。 森永恵子はそれに合わせて少し手をあげニコリとした。 一瞬背筋がぞくっとした。 それが勘違いの始まりだったと分かったのは暫らくたってからだ。 恵子はすっかり石川さゆりになりきって、 ゆっくりと歌い始めた。 「上野発の夜行列車降りたときから~ 青森駅は雪の中 ~ 」 石川さゆりのようなつやのある声とはいえないが、 それでも情感がこもり伸びのある声だ。
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