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浴衣がはらりと落ちると、
恵子は右手を高くあげてスクール水着だけで立っていた。
社長を見ると顔は固まり、
口を開けたまま目が点になっていた。
俺の心臓は破裂しそうだった。
歌が終わると、
「失礼しました」といって恵子はカラオケセットと浴衣を持ってそそくさと出て行った。
さっきまで恵子が歌っていた場所に空白が出来た。
小さい頃「不思議な少年」というテレビ番組で「時間よ止まれ!」というひと言で全ての動き
が固まる瞬間があったが、
まさにそんな状況に陥った。
カタリとも音のしない不思議な空気がその場を支配した。
その後、
自分でもどのように取り繕ったかは今もって思い出せない。
ただ自社の社長がぼんやりと死んだ魚のような目で自分を眺めていたことだけが記憶に
残っている。
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