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衣服に着いた埃やら木の破片やらを念入りに落として、お邪魔しますと家に入った。随分派手に扉壊したけど、何の反応も無かったな。アッシュの言う通り、空き家なんだろうか。
てくてくと僕の後ろからトトが付いて来る。中はちょっと埃っぽくて(扉蹴破った所為でもあるけど)トトがくしゅん、とくしゃみをした。
家の中を見渡す。誰かが生活していたのは間違いない。
荒れた家具が散乱している。…と、言うか家と言うよりアトリエみたいな感じだった。戸棚には絵の具やら薬品やらがずらっと並んでいるし、彫り途中の彫刻が沢山あった。
「……隠居暮らししながら趣味に没頭してた、って所かな」
「ね、誰も居ないでしょー?何かはあるけど」
いつの間に入って来たんだ。
アッシュが言う何か、って彫刻の事だったのかな。
良かった、死体とかじゃなくて。
「でも、あっちの部屋にもあったよ。ちょっとしか見てないから何があったのかはわからないけど」
どんだけ自由に見て回ってるの、このカカシ。一応、アッシュが言う部屋も覗いておこうか。堂々と扉蹴破っちゃったし。アッシュがこっちこっち、と案内する。
一見、普通の扉だ。蹴破った物と変わりはないがーー錆びた南京錠が掛かっている。
「この部屋だけ鍵が掛かってる」
住んでいた人にとって大事な部屋だったのかな。随分南京錠は錆びているから適当にガチャガチャ回せば取れるとは思う。……けど、大丈夫かな。家主の白骨死体とかありそう。見ても吃驚はしないだろうけど。
「ねぇねぇ、さっきみたいにバーンってしないの?」
「しないよ。これなら…普通に開きそう。…ほらね」
適当にガチャガチャ回していたら、案の定ポロっと南京錠は取れた。
一応、そっと扉を開ける。ギギッと相変わらず耳障りな音だ。
ーーその部屋には彫刻じゃなく、木彫りの人形が沢山置いてあった。風化していて何れもホラー要素が増してる。アッシュの言ってたの、これか。
「ドロシーに似てるね」
「何処が?」
「つまらなそうにしてる所とか!」
……アッシュ自体に悪気は無いし、勿論嫌味でも何でもなく素の感想を言っているのだろう。僕自身、他人の気持ちは理解出来ないし、人形に似てるって言われても…まあ、そうだねとしか言いようがない。
「ねぇ、ドロシー」
「何?」
「この子達だけ他と違うねー」
ふとアッシュが言う方向を見やると、床に木彫りの人形では無くブリキで出来た人形二体が手を取り合いながら倒れていた。
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