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圭吾が宿題を写し終わったらしく、サンキュ、と呟いてノートを返してきた。
「嘉音。ホームルーム終わったぞ。ほら、着替えて体育館に行こうぜ」
「ああ…うん。って圭吾、手紙の件ちゃんと覚えてる?」
「あったり前だろー!でも、難しい問題だからさぁ…とりあえず、体育終わってから考えるわ。今は体育が俺を呼んでる」
「馬鹿じゃないの」
圭吾は体操着に着替えながら意味不明な事を言っているので辛辣に返しておく。…はぁ、相変わらず調子良い奴だ。でも、約束は破った事はないから圭吾なりに考えてくれるだろう。僕も憂鬱な気分で体操着に着替えた。
「嘉音ー!!ちゃっちゃと決めろよー!」
今日の体育の科目はバスケだった。今、丁度一点差で僕のチームが負けてる状態。まあ、たかが体育のバスケだし勝とうが負けようが興味はないんだけど…。
圭吾から、パスを渡された。何だか球技をやると、僕と圭吾は相手に徹底的にマークされる。圭吾はサッカー部員だからわかるけど、何で僕まで。
僕はマークをすり抜け、ストンとボールを入れた。
「よっしゃあああ!流石立花!!」
いや、面倒くさいから早く終わらせたいだけなんだけど。チームの男子から歓声が上がる。圭吾も遠くでガッツポーズをしていた。
あんまり動きたくないって言うのに、味方チームの男子が僕と圭吾にばかりパスを回してくるものだから、どうしても動かざるを得ない。
「圭吾」
「よし、任せろ!」
圭吾はボールを受け取ると、華麗に妨害を避けながらダンクシュートをした。そこでホイッスルが鳴る。どうやら、僕達のチームが勝ったみたいだ。
「やったぜ!良かったー、嘉音と同じチームで。お前が敵だとやりにくいもん」
「そうなの?動くの面倒くさいから適当にやってるだけなんだけどさ」
「いやいや。お前、やっぱウチの部員に欲しい位運動神経良いよ。ラブレターもだけど、部活動の誘いもひっきりなしだもんな」
僕自身、特別運動神経が良いって感じた事はない。それなのに手紙同様、色んな運動系の部活から勧誘が来る。偶に文化部。勿論、面倒なので全て断っているのに、未だに諦めずに誘ってくる部もある。
「一応僕、部活に入ってるのに」
「は?お前、とうとう部活入ったのか!?部活入るなら絶対サッカー部に来いって言っただろ!」
「卒業まで帰宅部に入ってるから。知ってるだろ、面倒なの嫌いだって」
「帰宅部は部活じゃねーだろ!」
圭吾が抗議するようにむくれていると、授業終わりのチャイムが鳴った。
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