旅の一行

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       ―Ⅴ―    ザハリラと分かれたミナは、自分に宛てがわれた部屋に戻って休むことにした。 眉間に(しわ)を寄せるデュッカには、少し笑って大丈夫ですよと言う。 先ほどからミナは、ザハリラに対し、異能のひとつである風の力を使って、その心を宥めて穏やかにし、今回の旅の目的のために気持ちを奮い立たせていたのだった。 異能にはほかに、土、水、火の力があり、ミナは、そのすべてが使える代償のように、扱える力量がとても小さい。 そのため、ほんの少しの使用で限界を迎えるのだ。 デュッカはそれを心配している。 信用されないのは、これまでのことがあるため仕方ない。 それでも、ミナは一応、限界に達しないよう、言葉やそこに在る土、風、水、火を利用するようにはしている。 だが、伝心の特性を持つ風は、微力でも使い勝手がいいので、どうしても、やや、やり過ぎるところがあるのだ。 伝心は、心を伝えるので、術者の心根が重要になってくる。 デュッカは、身内に持つ風の力量はとてつもなく大きいものの、心根の部分で、ミナの代わりができない。 せめて事前に止めたいのだが、いつの間にか終わっているのだ。 デュッカは苛立たしげな息を吐いて、ミナが入った部屋を離れた。 そのまま鍛練場に行くと、数人のハイデル騎士団がいて、デュッカは彼ら…マルクトとファルとシェイドに打ち合いの相手をさせる。 やってみると、マルクトは身軽で、どうもデュッカの動きを読んでいる節がある。 ファルも身軽だが、それは風に煽られて舞う木の葉のようで掴み所がない。 シェイドは、その打ち込みに、厚みのある鋭さを持っていて、デュッカは、護衛としての彼らの実力に満足し、荒れた心を落ち着けた。 船は順調に進み、一行は思い思いに1日を過ごすと、夕食で食堂に集まった。 昼からずっと休んでいたミナも元気そうな姿を見せ、船長ライネスらと共に机を囲んで食事を摂った。 「予定通り8時にはセムズ港に着く。それまでゆっくりしていなさい」 ライネスの言葉に一同は頷き、食後は少し展望喫茶室で話した。 「…バルタ クィナールはセムズ港より少し離れた場所で停泊している。港でひと月以上停泊できないのでな。だが、知らせがあればすぐに向かう」 「ありがとうございます」 ミナの礼にライネスは頷いて、続けた。
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