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「それは…アルシュファイドは豊かですからね、物はよく売れるし、仕入れる物も豊富だし、船さえあれば輸送も楽にできますが、こちらは、途中で船に乗り換えなければなりませんからね…手が掛かるのですよ」
ミナは頷く。
「それを楽にできたらと思って。そして売れる見込みがあるなら、来る気にもなるかなって思ったんです」
「つまり道を造って、商人も呼ぼうと…しかし道造りは困難で、こちら側だと3国と協議しなければ」
「はい。取りまとめと、資金などは、イファハに頼んではどうかと思うんです」
ジークは目を瞬かせた。
「なぜ、イファハに…」
「その…恩を売ってきたので、多少…かどうかはさておき、わがまま聞いてくれるかなって」
「恩…ですか?」
ミナは両手を合わせて居心地悪そうにした。
「それはそれとして、イファハとしても近隣と仲良くするのは大事かなと」
「確かに、友好を深めるのは大事ですが…商人はどう呼ぶんです?」
「イファハの交渉次第ですが、例えば、露店を出すのにもまず場所が必要です。そういう保証を、国がするなら、信じて来られると思うんです…そしてその先に、仕入れる価値のある商品を持つザクォーネの存在が広く知られれば、そこまで一本の交易の道が繋がるんじゃないかと…思うばっかりで、恥ずかしいんですけど」
ジークは首を捻った。
「仕入れる価値のある商品とは、なんです?ツェリンスィアのことですか?」
ミナは慌てたように両手を顔の前で振った。
「いえ、ツェリンスィアとは別に…、でもそれはまだ、いろんな人の意見を聞いてみないことには、判らないことなんですっ、けど、出来ることなら、ザクォーネまで、道を延ばしたいんです…」
ジークはまっすぐミナを見た。
数ヵ月前、彼女の発言がもとで、収集官に対して、カザフィス王国のあらゆる資源の報告をするように通達があったと聞いている。
思うばかりと言っているが…それで国が動いた。
実現の見込みがなければ動かないはずだ。
「…まずはイファハが動くかですね」
ミナはほっとしたような笑みを浮かべた。
笑わずに話を聞いてくれたことが嬉しい。
「はい。それだけの益があるといいです」
ジークは、次はイファハ王国、そしてリンシャ王国とチタ共和国と、ザクォーネ王国の動きを見てみよう、と決めた。
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